臨書の世界

古今寄りの名書を臨書する 

アヴィニオン記2 1900年製のメリーゴーランド

9時を廻ったのにまだ明るい。

人通りが絶えない、子供連れも沢山通る。 

日本なら、「もう寝なさい!」

の時刻なのに。

目前に立て看板があり向かうから来る人は、はじめ、下半身しか見えない。

いろんな足がやって来る。

足だけ見ても、人種の違いが見えるようだ。

妊婦が来たと思ったら普通の人間だったり...

目の前のメリーゴーランドが廻り出す。

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4、5歳の少女が目をどんぐりのように開き必死の面持ちで手綱を曳き、

木馬の上下運動に合わせて胸を張る。

通り掛かりの若者が、

廻っているメリーゴーランドにヒョイと飛び乗り半回転して下りてゆく。

何事も無かったように、極めて自然に。

良く見ると二階建てだ、二階には普通のベンチがあり、

何処が足か手か判らないほどに絡み合って動かない若者のカップルも回転している。

30台と見える奥さんも、外から亭主らしきが一生懸命に写真を撮っている。

なんだか乗ってみたい誘惑に駆られる。

昔、子供たちを乗せてやったことが有るが自分で乗った経験は無い。

ビールとワイン二杯、もう恥じも外聞も無い。

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遂に乗ってしまったのだ。

AVIGNONの中央広場のメリーゴーランド、

天井、屋根、柱、これ以上付けられないほどの灯り、

まさに走馬灯の中にいる自分だ。

こんな事で一生の思い出が積み重なる。

後で聞くと、このメリーゴーランドは1900年製だそうだ。

前でベレー帽の老人がアコーデオンを奏で出した。

曲名は忘れたが日本人好みの曲、

孫のような少女が一曲終ると帽子を持って廻りだす。

何時の間にか夜の帳が下り、

周囲の建物がライトアップの中に浮かび上がる。

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