臨書の世界

古今寄りの名書を臨書する 

出羽三山記 (9)


最上川下り。
ポンポンと威勢の良い山形弁が飛び出す庄内おぼこ。



最上川舟歌を聴きながらのゆったりした川下りは至福ものだ。

 五月雨を集めてはやし最上川   芭蕉

の急流のイメージは無い。
案内ガールが、しきりに
「怖い川」
と言っていたから見掛けよりも速い流れなのだろう。
天竜川に比べ、川幅も広く水量も遥かに多い。



天竜川では竿と櫂を使った川下りだったが、
此処はエンジン付だ、そんな関係も有るのかもしれない。



(プロ撮影)

「義経主従」はこの川を上り、「芭蕉」「おしん」はこの川を下った。

山騒ぐ真っ只中を最上川
水涼し最上川にて旅果つる

両側に神代杉がニョキニョキと森から顔を出す。
運が良いと熊、鹿、猿などを見掛ける事が有るらしい。
10キロ程の間に橋は無い。

 

 

川の北側は道路も無い、時々小さな部落があるが、
不便さに耐えかねて村を離れる人が多く、
ある部落では住民が唯の一人だそうだ。
交通手段は船しかない。


新庄で蕎麦屋を探す。
駅前の案内板の「めん処○○」を尋ねて炎天を歩く。
探し当てると「んめ処○○」とある、しかも休店。
駅前に戻って蕎麦屋、これが板蕎麦、美味しい。

「久持良餅」を買う。
この旅の始めからTTさんが念仏のように唱えていた「久持良餅」だ。
「久持良餅」にもいろいろ有るらしい、TTさんは。
「本店へ行ってみる」
と荷物を転がして街の中へ消えて行った。

私は、本屋を探す。
評判の「たそがれ清兵衛」、映画も本も読んでない。
無性に読みたくなったのだ。
甚内の女将が、
藤沢周平の作品に「ごますり甚内」ってのもあるんですよ。」
と聞いていたからだ。
本屋でやっと探した単庫本、
その中に、「たそがれ清兵衛」も「ごますり甚内」も載っている。
新幹線の中で熟読している内に旅は終る。
藤沢周平ってのを知っているようで知って居なかった。
庄内を歩いて初めて知る庄内の風土、
これを知って初めて深まる藤沢周平の世界だ。

そう言えば、森敦、「月山」もまだ読んでない。
明日、古本屋で探してみよう。