臨書の世界

古今寄りの名書を臨書する 

続々 昆明記2

上海航路

ビール缶を片手にデッキに出る、大阪が次第に小さくなる。



瀬戸内海の島々を眺めるのを楽しみにしていたのだが、
船は真直ぐ南下、四国沖、九州南端をかすめて上海に向う。
視界360度が海、海、その海を見つめる女の子の瞳は清清しく澄んでいる。

 

喫茶の中国美人、日本語はたどたどしいいが、笑顔がなんとも優しい。



船の最前面の二階にある喫茶室からの眺めは快適だ、ビールも安い。
ここは税金が掛からないから飲み物、食事は日本国内の6割位の値段だ。

二週間の日中親善旅行団体の学生さん達とカラオケ、皆、はちきれそうだ。

 

Bさんが日本語の北国の春を歌うと、中国人の一人が中国語でお返し、
だったような気がするが定かではない。
なにしろ、12時乗船と同時に飲み始めたアルコールが切れないのだ。

2,3日、船内をウロウロしていると、
いつの間にか旧知の間柄のような顔見知りが出来る。
その一人、毎回の食事で一緒になる岐阜大に留学中の中国人学生がぼやく、
「同室の日本人学生男女が一晩中イチャイチャしていて全然眠れない、
いまもまだイチャイチャしてるよ、もう、たまらないよ、
日本の学生常識無いね」

国際問題関係の専攻とか、中国、日本の国内情勢は元より、アフガン、
北朝鮮等々世界情勢にも詳しい。
「Kさんもそろそろ限界ね、こっちのKもそう」
話がチベットに飛ぶ。
「中国政府は何故チベットをあんなに苛めるの」
の問いに、
「僕はチベット人が大嫌い、大体の漢民族がそうね、これは理屈ではないよ」
返事をはぐらかされた。
何回かの訪中で周囲の中国人、
特に漢民族の人たちからこんな話は聞いたことが無い。
まだまだ、私の中国での交友の深さが浅いのか、切り口が違うのか。

「船旅も良いけど時間がもったいないヨ、
日本でバイトすれば一日二万円は稼げるもんネ」
彼は、大きな体をゆすって何処へでも入り込んで行く、全く人見知りしない、
むしろ、傍若無人に近い。 まだ20歳代前半だろうが世情にも詳しい。
いずれ中国を背負って立つ、そんな後姿だ。

「さっきイチャイチャしてたのはあの二人だよ」
と彼が顎をしゃくる。 男の子は普通の男の子だが、
女の子は見るからに良家のお嬢さん、身形、衣装も清楚だ。

つづく