臨書の世界

古今寄りの名書を臨書する 

フランス ペリグー地方の旅 cadouin

例の少年少女達はまだ帰っていないらしく、宿の中は静まり返っている。

日記付けたり、案内書をチェックしたりして、今日は早寝とするか、とは思ったものの、

広場のバーのおばさんの顔が見たくなって階段を下りる。

入れ違いに、ドヤドヤと彼等が帰ってきた。

みな衣裳の掛かった衣紋掛けをぶらさげ、息を切らしている。

バーに行くと、

何時もの受付けの女性とさっき回廊の入れ口を教えてくれた二人が何か飲んでいる。

「ここへ坐らない?」

と椅子を揃える。

f:id:awao331:20000111090435j:plain

私は何時ものここの地酒の赤ワイン、仲々渋味が良い。

「ここの回廊はとっても有名なのよ、もう一つ、此所には有名なものがあるの、知ってる?」

「いや、知らない」

「此所には、キリストの着た衣が有るの」

「....」

「着たらしい、だけどね、本当のことは判らないの、

だから昔から沢山の巡礼が訪れるの、復活祭になると、

この広場はお参りする人で人で埋まってしまうの」

大体、こんなことらしい。

そう言われてみると、こんな小さな村なのに昼間の広場は4、50台の車で一杯になっている。

識者のみに知られた隠れた名所らしい。

 

酒の話になる、女の子の飲んでいるのはストローベリーのビールだそうだ。

受付けの女性、彼女は褐色の肌に蒼い眼、いかにもクロマニヨンの末裔のようだ、

彼女も何かのビールらしいもの、

「これは何のビール?」

尋ねると

「匂いを嗅いでみて」

と差し出す。

嗅いだことの有る匂いだが思い出せない、

「何とかよ」

と教えてくれたが、判らない。

「俺は日本酒が大好き」

「エー、アー、サキね、あのホットなのネー、あのスメル!」

と鼻を顰める。

「アルコール度は17.5%位しかないんだよ、俺は毎晩飲んでる」

「エー、毎晩?」

「なんで日本酒知ってるの?」

「以前、タイワンへ行ったことが有るの」

「オー、タイワンね、俺はタイペイに行ったことがあるよ」

タイペイ? 知らないわ」

どうも、話が合わない、「タイランド」だった。

「ところで、あの少年少女達は何?」

「彼女たちは合唱団よ、今日も??で歌ってきて、さっき帰ったところよ」

やはり、プロだった。

「後で広場で歌ってくれるかもしれないわ」

 

三人で写真を撮り、送る約束の指切りをする。

受付けの女性が名前と住所を書いてくれた。

名前はLAURENCEとあった。

「何か飲まない? 俺がおごるよ」

「もう、飲み過ぎたわ」

「じゃー俺はもう一杯」

二人とももう目がトロンとしている、相当早くから飲んでいたらしい。