臨書の世界

古今寄りの名書を臨書する 

成都記 5

三星堆博物館

中国のホテルは何処でもそうだが、
ロビーの真ん中の大きな机を前にデンと座っている人が居る。
大抵がサブマネージャーだ。
男性の場合も女性の場合も有る。
彼に話を持ち掛けると対応が早い。

三星堆までの行き方を尋ねると、
何処から何行きに乗って何処で降りる、時間は約一時間、
親切に教えてくれサインまでしてくれた。
「○○の歩き方」の記載とは異なるがこちらを信用する。

さて、そのバスの乗り場が判らない。
中国で道を尋ねて探し当てるまでが容易ではない。
サブマネージャーが教えてくれた乗り場は城北客運中心駅と言うのが馬鹿広い。
ある人は「あっち」、ある人は「こっち」
数え切れないほどのバスが並んでいる駅の中を歩き廻る。

中国の観光業の問題は此処に有る。
欧州や韓国では、特に韓国が充実しているが、
主だった駅、名所旧跡には必ず○の中に[i]の文字が入った
「インフォーメーション」が有って、宿、名所旧跡、交通等の情報が簡単に得られる。
パンフレットも多いし、懇切丁寧だ。
人口400万、しかも観光都市として名高い成都駅なのにそれらしき物が無い。

やっと乗り場を探し当てる。
市内バス路線と市外バス路線の乗り場が別々になっている。
探し方が悪かったのかもしれない。

約一時間余りで「三星堆博物館」の真ん前に着く。
立派な博物館だ。



何年か前に日本でもここの文物が展示された。
3500年前と推定される古代に、
揚子江流域にも高度な文明があったことが立証され、
現在の世界史の教科書を書き換えなければと騒がれた事を記憶している。

 

神樹、巨大で精巧な青銅器、太陽が宿る樹を模したらしい。
鋳型の大きさを想像して絶句する。

 

奇怪な人物像、仮面の数々。
顔、身体の造形も普通ではない。

 

写真に撮れないが、巨大な青銅物に混じって、
極めて微小な精巧な青銅の装飾物も目を引く。

  

 

頭の上にぽっかりと空いた穴、何かを意味しているのだろうが。
奇怪だ。


 

黄金の面像もあたりを払う。
王の仮面だろうか。





縦目仮面と名づけられて居るが、極端に飛び出したこの仮面の眼も特異だ。
大きく眼を見開いて世界を、世間を、周囲を、人を、物を......見よ、
との警告のようでも有る。



 

どれもこれもが何かを語りかけているようだ。
魂が揺り動かされるようだ。
これらの仮面は何を意味するのだろうか。
異様に飛び出した眼、空洞な頭蓋骨、
何か人類の未来を予告し何かの警告を発しているような気がしてならない。

それにしても、
これらを造る技術は何処の影響を受けているのだろうか。
鋳造技術もさることながら芸術性をも感じる表現技法、
3500年前、蛮地と言われた揚子江上流にこれだけの文明が突然発生したとは思えない。
現在、中国はおろか世界でもこのような形の青銅器は此処だけにしか発見されていない。

これらの遺物は、その内容、規模からして、
極めて財力のある王国の存在を意味している。
中国の歴史にはこの王国の記録は無いと思う。
中国の歴史に疎い私にとっては、尚更、想像を越える王国の存在だ。
まだまだ多くの文明が中国各地に眠っているような気がしてならない。

いずれ解明されるであろうが、謎、謎、謎だ。