ラスコー記 ペク.メルル洞窟
谷を下りきった真向かいのレストランで昼食。
トリュフのオムレツ、フォアグラ、を頼んだつもりだが、
持ってきたのはクルミの乗った周囲がパンの様なもので取り巻いてる奴、
給仕が何か説明してくれたが全然判らない。
惨めに打ちしがれた私の顔を見るに見兼ねたのだろう、 隣に居た夫婦連れの男の方が、
「オムレツは後から来るから心配しないで」 と英語で教えてくれた。
余りに美味しくて、胃が人並みの三分の一も無いことを忘れてしまう。
何時もなら半分も食べられない量なのに全部平らげてしまう、 後が大変だ。
世界の珍味と言われる二つまでが、この辺りに産出されるトリュフとフォアグラ、
土地柄のせいなのか、歴史的な背景でもあるのだろうか?
隣の夫婦は大きな肉の塊をペロッと食べてしまった。 ワインの大瓶も底をついている。
天井に日本の唐傘が逆になってぶら下がっている、電灯の傘にしていのだ。
オムレツを食べながら案内書を見ていて、とんだ勘違いに気が付いた。
洞窟画を公開しているのは、ペク.メルル洞窟の方だった。
一寸引き返さねばならないが、直ぐ近くだ。
有史以前の絵を生で見る事の出来る感動をどう伝えたら良いだろうか。
マンモスと馬が絡み合った鮮鋭な黒線画、今にも躍り掛かって来るようだ。
黒い斑点で埋められた馬が二匹、尻が重なって左右を向いている、所々に紅い斑点も、 その背後に人間の手が浮き上がる。
壁面に置いた手の上から草の茎や空洞の有る動物の骨の霧吹きのようなもので顔料を吹き付けているのだ。
もう一つ奇跡的に残っているのが、人間の足跡、 2万5千年前、人間が確かに此所に手を置いた、歩いた、その生々しい記録なのだ。