臨書の世界

古今寄りの名書を臨書する 

アヴィニオンの裏町

広場に戻ると、丁度、例のミニトレインが走ってきた、早速飛び乗る。 1時間でアヴィニヨンの小道を縫って見所を案内してくれる。

$旅物語 曲がりくねった旧市街で 「茉莉」 と漢字で書かれた看板を掛けたレストランを見つける。 街の中央からほんの一寸裏道に入ったところなのに、 旅行者は全く居なく、土地の人だけの感じだ。 期待した日本料理店ではなかった。 端正な顔の、多分中国人? ボーイが流暢な英語でメニュウを案内して呉れる。 「何かサッパリしたもの..」 推薦してくれた料理は、蟹と昆布の混ぜたようなものだった。 このあたりの料理にしてはサッパリしているのだろうが、 私には、オリーブオイルが一寸多すぎる。 昨夜見たアコーデオン弾きの老人が昨夜と同じように女の子を連れてやって来た、 曲も昨日と同じだ。 $旅物語 2、3曲弾き終わると、少女が客席を廻る。 数えてみたら25人の客の内、お金を帽子に入れたのは二人だけだった。 $旅物語 幾つかの教会を覗いて中央広場に戻り昼食。 さっきまで聲を張り上げていた手品師も似顔絵描きも 仲間達ととジョッキを傾けている。 陽光が陰ったと思ったら、突然雲行きが怪しくなった。 男達が手慣れた手付きでシートの屋根を取り付け、 巻き上げられていた壁がクルクルと下ろされる。 壁には透明なフィルムの窓がついているが、 途端にカフェの中が熱苦しさで充満する。 雨雲が通り過ぎたらしい、客達がブーブー言い出した。 シート状の壁が巻き上げられと、爽やかな風が通る。 宿に戻って昼寝の快感。 さあ、明日はプロヴァンス、アヴィニヨンともおさらばだ。 夜のうちにと、チェックアウトを済ませ、 モーニングコールを頼んで、外に出たら涼風が爽やかだ。 上着を取りに戻ると、親父が、 「ムッシュー..」 と言って、私の財布を差し出した。 又やってしまった、さっき、チェックアウトの時に忘れてしまったようだ。 全く冷や汗ものだ。 夕焼けのアヴィニヨンの橋を見たかったが、 公園は6時半で門が閉まってしまっている。 法王庁の広場で、 オーソレミヨとか帰れソレントへとかリごレットとか歌っている男、 それに合わせて、石畳の上で、バレーを踊る18、9の女の子、 ポツリポツリ遠巻きに観ている20人くらいの人が、一曲終る度に、ポツポツと拍手。 何曲か歌い踊り終わると、 踊っていた子が袋を持って踊るポーズで人々の前を一回りする。 コインを一枚入れるとハッとするような白い歯の笑顔がこぼれた、 まだあどけない。 昼食をとったカフェに入ると、ボーイが覚えていて、 「ウン、さっきと同じビールだね。」 という感じで、いい笑顔だ。 アメリカ人らしい高校生くらいの一団が輪になって、 似顔絵の客になっている仲間の一人をぐるりと取り囲んでいる。 描いているのは昼間からビールを飲んでいたあの似顔絵描きだ。 心なしか絵が踊っている。 描き終わると歓声が上がり、拍手喝采。

$旅物語 今回、アルザス、ミラノ、フィレンツェ、ローマ、ニース、アルルと廻ってきたが、 何時か一年くらい住み着くところを見付けるのも目的の一つだ。 アヴィニヨンがいい、一番気に入った。 適当に文化的で、適当に黴の匂いもする、 食い物もまあまあ、酒もいろいろ有る、何よりも、人が明るい。