臨書の世界

古今寄りの名書を臨書する 

出羽三山記 (8)

酒田駅前の案内板のスケールで計ると、宿まで500m内外となる。
「歩こう」
と炎天下を歩き出す。
500mの三倍も歩いて、これも古い宿、菊水ホテル。
酒田の見所が歩いて行ける距離に転がっている。

一服して、早速、
遠いい処からと、土門拳記念館。
洒落た記念館だ、それもその筈、権威ある建築関係の賞に輝いている建造物だ。





「古寺巡礼」
若い頃、これを見て写真心が目覚めたものだ。
「室生寺」
これを見て、わざわざ、室生寺まで行ったこともある。
土門拳の年表を見ると、若いときに随分と苦労している。
そんな苦労が、後のあの執念に結びついているのだろう。


時間が無くなった。
急ぎ足で本間家旧本邸。



3000町歩、3000人の小作人を抱える日本一の大地主の家、
想像していたものよりも質素極まりない。
良く見ると、目立たないところにお金が掛かっているようでもある。
あの時代、十代もの間、家を傾けることなく存続させるのには、
さぞかし、代々の当主の努力は並大抵な事では無かったであろう。


帰りがけに山居倉庫、
本間家の米蔵が何層にも立ち並ぶ。
観光客も家路を急ぐ夕暮れ時、
さっきまでの喧騒が嘘のように人並みが途絶える。
銀杏並木に爽やかな風が通り抜ける。
近くに住む子供達だろう、銀杏の大木に見え隠れする。



庭石に腰を下ろす。
ふっと、米俵を担いだ人足達が慌しく行き交い、
荷車がガラガラと通り過ぎる。
そんな情景が浮かんで来る。

 

緑陰に風集まりし童かな


夕方、心づくしの料理と地酒「ジョウキゲン」。
「上機嫌」かと思ったら「上喜元」だった。



酒田の街中に残る唯一の酒蔵の地酒だそうだ。

浴衣を着て花火見物、
それ程大掛かりではないが最上川に打ち上げられる花火は、
酒田の町を背景に絵になる。


(Kさん撮影)

来し方を指折り数え遠花火